(大した傷じゃないんだけどな…)

盗み見


たまにうっかりときめいて、即座に否定すると良いと思います。


以下妄想文。絵と少々違いますが…
勇気のある方(笑)はぐぐっと下へv





















「いたっ…」

戦闘が終了して、さて行こうかとスカートに付いた土埃を掃った瞬間、鋭い痛みが走った。
戦っている間は気付かなかったけれど、右手の甲がうっすらと裂けている。弱いモンスターだからと油断したせいだろうか。
幸い出血は大したこともなく、止血しておけば数日で治る程度の傷だった。

「どうした?」

荷物を背負いかけたククールが、私の声に気付いたのか近づいて来る。

「あ…。ちょっと、ね。大したことないから」

「見せてみろよ」

いいってば、と後ろに隠そうとした右腕をあっさり掴み、しげしげと見た後、ククールは顔をしかめた。

「思ったより傷は浅いけどな。でも、これじゃ武器握るたびに痛いぜ?」

そうかな、と思った瞬間、もう呪文を唱え始めている。

(大した傷じゃないんだけどな…)

私達の魔力には限界があるから、目的地までの行程が長い場合、なるべく魔法は使わないようにしている。
それは攻撃であっても回復であっても同じだ。

(いいのかな?)

ちらりと我らがリーダーに視線を送ると、彼はこくりと小さく頷いた。
治してもらいなよ、ということらしい。
ごめんね、と心の中で謝ってから傷を治してくれているククールと向き合った。
傷はもうほとんど治りかけている。

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で唱える癒しの呪文は、この旅で何度も耳にした。
エイトも、ヤンガスでさえも使えると知った時は驚いたっけ。
当然ながら呪文は誰であれ同じ内容だけれど、使い手によって受ける印象は全然違う。
例えば、エイトは優しくあたたかで、ヤンガスは少したどたどしくなんとか覚えたっていう感じ。
ククールはさすがに僧侶だけあって慣れたものだ。だけど、旅の当初はいかにも形式です、と言わんばかりのよそよそしささえ感じられた(特にエイトやヤンガスには)。
でも、今は違うような気がする。
そう思って自然と唇に目をやった。

「……」

ククールの右手には私の右手が乗っている。
左手は傷を包み込むかのようにかざしている。
顔は若干下に傾け、目を伏せている。

女の私でも羨ましく思えるほどの長い睫毛。
すっととおった鼻筋。
少し薄く思えるけれど、綺麗な形の唇。
高すぎず、低すぎず、心地の良いテノール。

「はい、終わり」

「……」

「ゼシカ?」

「…えっ!? あ、ありがと」

慌てて手を離す。
傷は完全になくなっていた。悔しいけど、さすが。

「ゼ・シ・カちゃん。…もしかして、見惚れてた?
 やっとその気になってくれたのか、ハニー」

そんなことを言いながら腰にまわしてきた手を払いのけつつ、治った右手で鞭を握り締める。きっと顔には冷たい微笑み。

「ちょっ」


そんなことは、認めない。


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冒険を進めていくとどんどん仲良くなっていくカルテットに萌え。
気が付くと夫婦漫才なククゼシにニヤニヤ(笑)

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